公開日:2020年2月28日 最終更新日:2020年2月28日
「大切な人がいなくなる」、そんなことを考えたくはないけれど、「もしも」のときはやってきます。「終活」「エンディングノート」という言葉は身近になりましたが、LGBTのパートナーがいる方の「もしも」のときは深刻です。病気や事故、災害が増えたいま、それぞれの立場からの「もしも」の備えを考えてみましょう。
「もしものノート」で備えを!誰にでもふりかかる「もしも」のとき
今回、特定非営利活動法人カラフルブランケッツ理事長であり、外国人・障がいをお持ちの方・シングルマザー&ファザー・LGBTなどのマイノリティサポートに取り組まれている行政書士の康純香先生に、大切な人のために、もしもに備えて準備する「もしものノート」お話を伺いました。
「「もしものノート」は、その名の通り「もしも」のことがあったときに必要となるものです。
たとえば、これを読まれているあなたがこの後、交通事故や天災などで意識不明になったり、急に亡くなられることがないとはいえません。その後に残されたご遺族(ご両親や配偶者・お子様など)は、あなたの人間関係や財産をご存知でしょうか?
独立して住んでいれば、ご両親でも預金について知らないでしょうし、同居の家族の加入している保険って、いま、わかりますか?
誰かの身に急になにかあると遺された方は悲しみに暮れながら、そういった書類を探さないといけないんです。昔は家探しすればある程度出てきましたが、ペーパーレス化の現在、その作業は非常にむずかしくなっています。
同じようなもので「エンディングノート」といえば、ご存知の方も多いと思います。しかし、エンディングノートは終活のイメージが強く、まだまだ先のことと思ってしまいます。
しかし、「もしも」はいつ誰にでも起こり得ますし、「もしも」のときのダメージはどんな方にも平等に重いです。だから、独立した人間関係や財産をもったすべての人に書いていただきたく、「もしものノート」という名前をつけました」と、康先生は「もしものノート」をつくった経緯を教えてくださいました。
自分事が意識できるように伝えると必要性は理解できるのだけど…
たとえば、あなたの預金。
- どの銀行で口座を持っているか、ご遺族が知ることができますか?
- 通帳の場所を伝えてありますか?
- そもそも通帳はありますか?
- 定期も?ドル建ては?
- アプリで管理してたら?スマホのロックは伝えていますか?
預金一つとっても、すんなりいかないことが想像できます。
- 生命保険は?
- SNSのアカウントは?
- お葬式に呼んで欲しい人は?
- せめて亡くなったことを連絡してほしい人はわかりますか?
「こうやって話すと、みなさん必要性は理解してくれます」と、康先生は続けます。
エンディングノートよりも書きやすいように工夫した「もしものノート」
「本屋でエンディングノートを手に取ってみてください。あんな大作、よほどの時間と根気がないと埋められませんし、わざわざお金を払ってまで書こうという方は、よほど意識の高い方でしょう。
しかし、万が一、交通事故や天災に遭ったら?まさに「もしも」が起きたときに、このノートがあるかないかでご遺族の負担も違いますし、あなたの大切な人や関わりのある人への伝わり方も違ってきます。
1人でも多くの人に書いて欲しくて、最低限の項目だけを用意し、30分もあれば十分書ける「もしものノート」をつくりました。
また、本屋に行かなくても、当事務所のホームページから無償でダウンロードできるようにもしました」と、書かない人、書けない人の気持ちに寄り添い、それでも「大切な人のために必要なもの」として伝えるための工夫は、康先生ならではのもの。
LGBTの方でパートナーがいる場合、もっと深刻な問題
「ここまでは一般的なお話です。ここからはLGBT用のもしものノートのお話をします」と、康先生は続けます。
「LGBTの方でパートナーがいる場合、一般的な夫婦と同様に暮らされている方もたくさんいらっしゃいます。先程お話したように、片方が「もしも」の事情で急逝してしまったら?事態はもっと深刻です。
なぜなら、いまの日本の法律では家族同然のパートナーであっても、「法律上は赤の他人」だからです。つまり通帳があっても証券があっても目の前に金塊があっても、それを相続することができないのです。
当然パートナーなんだから、自分になにかあったら全部譲る気持ちでいたかもしれません。しかし、それを証明する方法はありますか?
公正証書遺言などがあるとこの問題をクリアできますが、つくられている人はまだまだ少数派です(それでも私は公正証書を強くお勧めしています)。
しかし、なにか目に見える形であなたの意思を遺しておかないと、「もしも」のときに、まったく伝えることができず、あなたの希望は叶いません。遺されたご遺族も、あなたの望みを知りようがないので叶えようもないのです」
筆者は、2019年に放送されたドラマ「きのう何食べた?」(テレビ東京ドラマ24)でのストーリーを思い出しました。
このドラマは、同性パートナーのシロさんとケンジが繰り広げる愛溢れるドラマですが、ドラマ第8話で「将来パートナーに財産を残したい」と、同性パートナーが弁護士のシロさんに相談するシーンがありました。LGBTの方でパートナーがいる場合は、より深刻な問題のようです。
「もしものノート」は、すべての人の「もしも」のときに効果をもつ
「「もしものノート」は、すべての人に必要なものだと思っています。
そして、「LGBTの方」「ご家族に障がいをお持ちの方がいらっしゃる方」など、法律で守られているとはいえない方々にとっては、一層大事なものだと思っています。「もしも」のときには大きな効果をもちます。
ぜひ一度、「もしものノート」をご覧ください。そして、できれば書いてみてください」と、康先生はおっしゃいます。
「もしものノート(LGBT版)」は、こう行政書士事務所のホームページより無料でダウンロードできるそうです。あなたの大切な人のために、もしもに備えて準備してみませんか?
注意) もしものノートは、LGBT版、通常版、サポートが必要な方のご家族版とあり、LGBT版はホームページよりダウンロードできます。それ以外はホームページよりお尋ねください(すべて無料提供)。
【取材協力】
特定非営利活動法人カラフルブランケッツ理事長
行政書士 康純香さん
2014年 こう行政書士事務所開業。外国人・障がいをお持ちの方・シングルマザー&ファザー・LGBTなどのマイノリティーサポーター業務に注力。2019年 特定非営利活動法人カラフルブランケッツを設立。理事長就任。2020年3月頃出版予定。
取材・文 / エルシーラボ編集部